こだわりの印刷・製本加工で高級感をまとう特別な図録を制作!|九谷赤絵全国巡回展開催実行委員会 様
- 2024年8月15日
- 高精細印刷
山水、花鳥など、絵画的で大胆な「上絵付け」による装飾が美しい「九谷焼」。石川県の伝統工芸品としてだけでなく、芸術品として海外で高く評価され、皿や茶碗のほか、装飾品としても世界中で広く愛されています。
九谷焼の「赤絵」とは?
数多くの種類がある九谷焼の中で、「赤絵」という様式があるのをご存知でしょうか?
「赤絵」は江戸時代後期から明治時代にかけて登場した様式で、滲みにくい赤の色絵の具の特性を活かし、器全体に「細描」と呼ばれる細かい描き込みを施すものです。
さらに「赤絵」には、赤の色絵の具の他に、金の飾り付けで華やかに彩られた作品が多いという特徴も。背景を赤で塗り埋めた器に金で絵付けしたものは、赤絵の中でも特に「金襴手」と呼ばれています。
「赤絵」の作品の見どころは、なんと言っても職人の高い技術が要求される「細描」の緻密な絵付けと、金の飾り付けによる絵柄と色の華やかな取り合わせ。京焼の名工である青木木米(あおき もくべい)の指導によって金沢の春日山窯で制作された作品がきっかけとなり、その後、宮本屋窯で腕をふるった飯田屋八郎右衛門(いいだや はちろうえもん)が細描の様式を確立し、近現代の赤絵作品のルーツとなったそうです。
「九谷赤絵の極致 宮本屋窯と飯田屋八郎右衛門の世界」展とは?
今回ご紹介するのは、「赤絵」の魅力が存分に詰まった、九谷赤絵全国巡回展開催実行委員会 様発行の図録、「九谷赤絵の極致 宮本屋窯と飯田屋八郎右衛門の世界」です。
令和6年(2024年)5月24 日〜令和8年(2026年)6月28日にかけて、東京展・北海道展・兵庫展・愛知展・広島展・滋賀展・石川展の全7会場を巡回する展覧会「九谷赤絵の極致 宮本屋窯と飯田屋八郎右衛門の世界」の共通展観図録で、日本で唯一の九谷焼の専門美術館である、石川県九谷焼美術館 様にて企画・編集が行われました。
当展覧会、そして当図録では、長い九谷焼の歴史の中で極めて重要な役割を果たした宮本屋窯(みやもとやがま)の作品を中心に紹介しています。
宮本屋窯は再興九谷の一つで、『方氏墨譜(ほうしぼくふ)』から画題の一部の着想を得たことで独自性を発揮。「九谷赤絵といえば宮本屋窯」と言われるほどの不動の地位を築きました。
中でも、世界一の細かさ、黒みがかった赤(通称:血赤)、金彩に「赤以外の上絵釉」を着色したことが、特筆すべき点として挙げられます。この立役者となったのが、主画工の飯田屋八郎右衛門です。
このたび、弊社・ナレッジクライマーでは、そんな九谷赤絵の歴史に深く刻まれる宮本屋窯と、飯田屋八郎右衛門の作品を詰め込んだ当図録の表紙のデザイン、印刷、製本と、展覧会ポスター・チラシの制作をお手伝いさせていただきました。
お客様のご要望
・今回の展覧会を象徴するような高級感のあるデザインを取り入れたい。
・今までにないようなインパクトのある図録に仕上げたい。
そこで当図録の表紙デザインには、他の図録にはなかなか見られないようなこだわりの印刷・製本加工をいくつか取り入れ、特別な図録に仕上げました。
九谷赤絵の華やかさを一層引き出す こだわりの印刷・製本加工
①擬似エンボス加工
擬似エンボス加工とは、2種類の性質が異なるニスを使用し、疑似的にエンボスを表現する印刷手法です。 その2種類のニスとは、艶のあるオーバープリントUVニス(OPニス)と、光沢UVニスのこと。OPニスの上に光沢UVニスを引き、そこに紫外線を照射させることでニスが固まり、ざらざらとしたエンボスの質感を再現することができます。
この図録の表紙に満点の迫力で描かれているのは、大きな九谷赤絵のお皿の作品。実はこの作品の写真の部分はツルツルとした艶のある質感になっており、反対にそのまわりの背景はざらざらとした手触りになっています。
こちらは擬似エンボス加工を使用しており、作品の部分にはOPニス加工を、周りの部分を擬似エンボスとすることで、紙をプレスすることなく表紙に立体感を出し、作品をより強調する工夫を施しました。
九谷赤絵の作品の艶を再現したかのような印刷で、図録を手に取る人を魅了し九谷赤絵の作品への興味を引いています。
②小口折り製本
この図録では、表紙裏の部分に小口折り製本を施しております。
小口折り製本とは、表紙とカバーが一体化した製本方法で、表紙の小口側の袖を長く作り、長い分表紙の裏側に折り曲げた仮製本の製本様式のもののことをいいます。
長期保存などにも適しており、図録や記念誌によく使用される折り加工で、ブックカバーをかけた装丁のように表紙に存在感を出しています。
③金と赤の箔押し加工
図録で誰もが必ず目にすることになるタイトル部分には、目を引く金色と赤色の箔押し加工を施しました。
箔押し加工とは、凹凸のある金属製の版を使用して熱と圧をかけることで、用紙に箔を転写する加工方法です。この一手間を加えるだけで、デザインがさらに際立ちます。
「赤絵」の「赤」の文字には赤色の箔押し、その他の文字の一部を金の箔押しを用いることで、「赤絵」の特徴である「金襴手」(背景を赤で塗り埋めた器に金で絵付けしたもの)を表現。キラキラと輝く高級感のある図録に仕上げました。
また、裏表紙の鳥の絵柄にも金の箔押しを用いています。この部分のこだわりポイントは、なんと、先ほど紹介した「小口折り製本」の折られた部分にまたがって金の箔押しを施している点です!
金で箔を押してから表紙を折る製本は金の部分が割れる等のリスクがあるため、このような加工が行われている図録はあまり多くありません。そんな弊社でも初の試みとなった数少ない加工を、細かく修正を重ね、金の部分を割ることなく綺麗に行うことに成功しました。
タイトルの文字を含む合計5点の箔押しを行なっているため、一つ一つの箔に合わせたデザインデータをそれぞれ作成し、このようなこだわりの表紙に仕上げました。
④FMスクリーン高精細印刷
当図録はもちろん、弊社・ナレッジクライマー(能登印刷)の最大の強みである「高精細印刷(FMスクリーン印刷)」にて印刷しております。
通常の印刷(AMスクリーン印刷)では規則的に並んだアミ点の大小で階調を表現するのに対し、「FMスクリーン印刷」では微細な点の集散で階調を表現する印刷方法です。アミ点が肉眼では見えないほど微細なため、細部の再現性が高まり、細やかに色の表現をすることが可能になります。
色校正も丁寧に行い、図録に使用されている写真全ての色の再現性にこだわっています。
作品の細部まで魅力を引き出すデザイン・画像補正のこだわり
当図録の表紙デザインには、実際の九谷赤絵の作品に描かれている絵柄が散りばめられています。
これらはどれも当図録で紹介されている作品のもの。裏表紙には龍と金の鳥が顔を見合わせて向かい合っていたり、牛やウサギなどの動物が登場していたり…九谷焼の細かい絵柄に刻まれている遊び心や華やかさが、この図録の表紙にも表現されています。
また、表紙や背表紙の文字は、赤絵の絵柄の上に重なっても読みやすいよう、フォントの選定やシャドウをつけるなどの工夫をしました。
図録に使用されている作品の画像は、画像処理と印刷に精通した熟練のプリンティングディレクターがディレクションを行い、画像一枚一枚の埃や汚れの除去をはじめ、作品そのものを再現できるよう処理を行いました。
特にこだわったのは、宮本屋窯の作品の大きな特徴である「黒みがかった赤(血赤)」の色味を忠実に再現すること。実際に現物の作品を見せていただき、血赤の部分を含め色味の丁寧な確認を重ねました。
その他、明るい部分と暗い部分のコントラストやシャドウの部分の強弱を細かく調整し、現物の作品に忠実に補正しました。
納品後、こちらの図録は展覧会会場にて販売され、購入される方も非常に多く、人気を集めています。
図録からデザインの色を変更した展覧会ポスター・チラシ
今回は、図録だけでなく展覧会のポスターとチラシもお手伝いさせていただきました。
図録の表紙デザインの背景には、赤絵の作品が際立つように青を使用していましたが、ポスターとチラシにはあえて赤を採用しました。
通常、図録とポスター・チラシのデザインは統一することが多いですが、お客様から「同じにする必要はないのでは?」という声があがり、他とは一味違う展覧会のイメージを引きだすべく、デザインを変更することに。赤絵の「血赤」のような赤を採用することでさらにインパクトを出し、目をひくポスターとチラシに仕上がっています。
お客様にお聞きした生の声!
世界一細かいといわれ、1㎜
石川県の高品質な図録制作は能登印刷
このように、弊社・ナレッジクライマー(能登印刷)では、長年積み重ねてきた美術印刷の実績や、高品位印刷の技術を活かし、美術館・博物館の図録や印刷物のお手伝いを企画・デザインからさせていただいております。
また、今回のような一味変わった装丁の図録や、印刷・製本加工技術を用いた幅広い表現のデザイン制作も可能です。「今までにないような図録を作りたい」、「インパクトのある図録に仕上げたい」といったご要望がございましたら、お気軽にご相談いただければと思います。
石川県に限らず、全国対応可能!お客様に丁寧にヒアリングさせていただき、ご要望に寄り添いながらデザイン・印刷させていただきますので、ご興味ございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
営業:山崎裕一 (能登印刷 メディアプロデュース北陸営業本部)
デザイン:中林奈菜(能登印刷 Webマーケティング事業部)
画像補正:高岡講太(能登印刷 制作本部)
クライアント:九谷赤絵全国巡回展開催実行委員会 様
※ 会社名・部署名などは取材および記事制作当時のものになります。